特定技能外国人バス・タクシー運転者に必要な日本語能力が緩和

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外国人バス・タクシー運転者に必要な日本語能力とは?今後の緩和案と採用のポイント

外国人バス・タクシー運転者に必要な日本語能力とは?今後の緩和案と採用のポイント

日本国内ではバスやタクシーの運行に関わる運転者不足が深刻化しています。特に少子高齢化やコロナ禍の影響で国内人材の確保が困難となり、多くの交通事業者が頭を抱えている状況です。そうした中で注目されているのが、外国人材の積極採用です。しかしながら、言語の壁が依然として大きな課題となっており、日本語能力に関する厳格な要件が運用上の障壁となってきました。

この記事では、2025年現在の日本語能力要件の現状と、その見直しに関する政府の最新方針、さらに離島・半島といった地域特例についても掘り下げて解説します。また、外国人材の活用に不安を感じている事業者向けに、専門の人材紹介会社「CK株式会社」の活用方法についても紹介します。

✅目次

国内のバスおよびタクシー業界では、運転者の高齢化が進む中、新規参入者の減少が続いています。これに伴い、地方を中心にバス路線の廃止や減便が進み、地域の移動手段が著しく制限されるという事態も起きています。国土交通省のデータによると、令和4年度には月平均で約83人のバス運転者が減少しており、これは毎月約8系統が廃止されていることに相当します。

このような状況下で政府は外国人材の積極的な導入に舵を切り、日本語能力要件の緩和を含めた制度改正を進めています。特定技能制度の枠組みを活用し、これまでN3レベル(中級)を求めていた日本語要件を、より易しいN4レベル(初級後半)まで緩和する方向で検討が進められており、現場からも期待の声が上がっています。

これらの動きを踏まえ、企業としてどのように外国人材の採用を進めればよいのか、具体的なポイントや注意点を含めて、本記事で詳細に解説していきます。最後までぜひご覧ください。

バス・タクシー運転者不足の現状と課題

日本のバス・タクシー業界では、運転者の高齢化、若年層の就業敬遠、地方の人口減少などの複合的要因により、深刻な人手不足が続いています。特に新型コロナウイルス感染症の影響により輸送人員と運送収入が激減したことが引き金となり、退職や離職が相次ぎ、問題はさらに悪化しています。

実際、日本バス協会の試算によれば、今後も年間約3,000人のバス運転者が減少し続けると見込まれており、地方ではバスの減便・廃止が日常的に進んでいます。タクシー業界でも、直近5年で約5.8万人もの運転者が減少し、有効求人倍率は3.5〜4.05倍と極めて高い水準で推移しています。

バス・タクシーの運転者不足の現状

出典:国土交通省

以下のような影響が顕著に現れています:

  • 年間約2,500キロの路線が廃止(年間約100系統)
  • 年間約12,000便の減便が発生(ドライバー2,000人分の不足に相当)
  • 地方部では、令和4年度末からの1年間で約1,300人のタクシー運転者が減少

さらに、下図のグラフに見られるように、運転者数はH22年度以降一貫して減少傾向にあり、令和に入ってからもその流れは止まっていません。

このような状況の中、バス・タクシー事業者にとって最も重要な課題は「早急な人材確保」です。しかしながら、労働時間が長く、賃金水準が全産業平均よりも低いことが多く、若者にとって魅力的な職業とされていない現実もあります。

これらの課題を解決するために、政府は外国人材の活用を視野に入れた制度改正を進めています。

外国人運転者に求められる日本語能力とは

バス・タクシー運転者として外国人を採用する際、最も重視されるのが「日本語能力」です。乗客への案内や緊急時対応など、コミュニケーション能力が業務上不可欠であるため、これまで日本語能力試験(JLPT)のN3レベル以上が求められてきました。

しかし、国土交通省は慢性的な人手不足に対応するため、一定条件下でN4レベルの外国人にも就労を認める緩和案を提示しています。この見直しは、特定技能制度の枠組みに基づき、2024年度から段階的に導入されつつあります。

バス・タクシー運転者に関わる日本語能力要件

出典:国土交通省

具体的には以下の要件が設けられています:

  • N3以上:全国どこでも単独で乗務可能
  • N4+日本語サポーター:全国での乗務が可能
  • 離島・半島地域:N4でも単独乗務が可能(サポーター不要)

N3レベルは日本語教育の参照枠で「B1(中級)」に相当し、通常の会話に支障がないとされる水準です。一方、N4は「A2(初級後半)」相当で、日常的な表現は理解できるものの、緊急時の対応やイレギュラーな案内には支援が必要と判断されています。

これらの制度は、日本語能力だけでなく「接遇能力」や「運転技術」の証明も求められる仕組みになっています。以下の図はN3とN4の違いを視覚的に整理したものです。

安全性の水準について

出典:国土交通省

このように、N4でも安全性や接遇の基本が担保されている場合、現場での業務は可能とされています。今後は日本語試験の受験機会の拡大やサポーター制度の整備により、より多くの外国人がバス・タクシー業界で活躍できるようになります。

特定技能制度の概要と活用法

「特定技能制度」は、深刻な人手不足が認められる産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れるために2019年より施行された在留資格制度です。バス・タクシー業界も、令和6年(2024年)3月29日の閣議決定により、正式にこの制度の対象分野に追加されました。

特定技能には「1号」と「2号」があり、バス・タクシー運転者は「特定技能1号」に該当します。この資格で就労するには、「特定技能評価試験の合格」と「日本語能力試験(N3またはN4)」の合格が基本要件です。また、必要に応じて、日本語サポーターの配置や新任研修などの補完措置が講じられます。

制度上の流れは以下のようになります:

  • 特定技能評価試験(運転技能・接遇知識)に合格
  • 日本語能力試験N3以上(またはN4+サポーター)を取得
  • 在留資格「特定技能1号」で入国・就労
  • 事業者側は、受け入れ計画の策定と研修の実施が必要

特定技能制度の導入により、国内の人手不足を外国人労働力で補う体制が整備されつつあります。特にタクシーや路線バスといった公共交通機関は、地域住民の「足」として欠かせない存在であるため、安定的な人材確保が急務となっています。

この制度を活用すれば、実務能力と日本語力のバランスが取れた外国人材の採用が可能となり、企業の人手不足解消に直結します。

また、特定技能は最長5年間の在留が可能であり、他の在留資格と異なり、家族帯同が原則認められていないため、より就労に集中できるという利点もあります。

離島・半島地域での例外措置とその背景

バス・タクシー業界における人材不足の中でも、特に深刻な状況にあるのが地方の「離島」や「半島」地域です。これらの地域では、公共交通が唯一の移動手段であることも多く、運転者の確保が地域住民の生活に直結する課題となっています。

こうした背景を受け、国は離島・半島地域に限っては、日本語能力N4レベルの外国人運転者でも単独で乗務を可能とする特例措置を導入しました。これは、当該地域の交通事情や利用者構成、業務内容などを総合的に勘案した上で、N4でも安全な運行が可能であると判断されたためです。

離島・半島における交通事故発生状況

出典:国土交通省

上図にある通り、離島・半島における交通事故の発生件数(走行100万kmあたり)は「2.34件」と、全国平均「4.28件」より大幅に低く、運行の安全性が統計的にも裏付けられています。これに加えて、営業所が無線や携帯電話等の通信手段を用いたバックアップ体制を整備することで、緊急対応にも支障はないとされています。

さらに、道路構造や利用者構成も特例導入の要因となっています。以下の図をご覧ください:

離島・半島における道路・利用状況

出典:国土交通省

この図からも分かるように、離島・半島地域ではバス利用者が少なく、ほとんどが地元の常連客で構成されているため、複雑な案内や対応が必要な場面は少ないのが実情です。バス路線も単純な構造で、運転上の難易度も比較的低いとされています。

これらの理由により、日本語サポーターの同乗を必須とせず、N4単独乗務でも運行が可能とされました。事業者は営業所でのバックアップ体制を整えることで、外国人運転者をより柔軟に配置できるようになります。

このように、地域ごとの特性に応じた制度設計が進んでいることは、今後の外国人材活用においても重要な参考となります。

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